時事ネタWATCH ─ 中高年MSMと暮らし ─
「あなたも人権講師になれる? ─ LGBTブームの功罪」
「LGBTの研修講師になれる」!?
最近、LGBT当事者による自己啓発ビジネスや高額のセミナー商法が問題になっています。それらに対する注意書きを、トランスジェンダーの活動家・遠藤まめたさんが、「高額セミナーで失敗しないための4つのポイント」としてまとめています。
「『自分らしく稼げる』『○○万円儲かる』『LGBTの研修講師になれる』などの宣伝を受けて、参加費数千円の説明会に行っただけなのに、その場で数十万円~100万円前後の高額セミナーへと勧誘されることがあります。」との事です。
実際にセミナー料を支払ったが返金をしてほしいという人達から相談を受けている堀江哲史弁護士(名古屋弁護士会)に聴きました。
「講演を聞いて関心を持って会ったところ、最初は個別に話を聞いてくれるという事で、1回1万円とかいう話だったのが、その内にセミナーに誘導されて、という流れです。支払った金額が100万円を超える人もいます。
いわゆる起業セミナーで、人脈作りの方法や話し方とかを教えて、『あなたも講師になれる』というものです。その相談者はカフェをやりたいとの事で、自営をしたいというセクシュアルマイノリティの心理を上手くついているようにも感じました。
相談者は、途中で疑問を抱いて止めたいと言ったのですが、止めさせてくれず、そこで私の所に相談に来られました。クレジット契約でしたので、クレジット会社に支払い停止の要請を送ったら、ようやく止めることが出来ました。」
この「講師」のブログでは、「確かに、私が有料のサービスとして提供しているもののコンサルティング価格は、中には数十万円するものもあります。」と書かれていました(現在は削除)。
また、ホームページで「●●県教育委員会の人権教育・啓発指導員、●●市の人権教育・啓発講師」と唱っており、確かに、自治体の研修の講師である点をPRしているようです。
5月に東京で勉強会
こうした中、5月に東京でレインボーウィークの一環で「カラフル連絡網」主催で、「セミナー商法や高額相談ビジネスなどの問題とLGBT活動」という勉強会が開かれました。
勉強会の様子は朝日新聞でも「LGBTめぐる金銭被害を議論」と題して取り上げられました。全国から30人程参加して議論したようです。
勉強会を企画した「レインボープライド愛媛」のエディさんにお話を聴きました。
「問題の当事者は、行政からの信頼を利用して広く高額ビジネスにつなげているといった状況があります。深刻な問題だとして2時間半、時間が足りないほど熱心に話し合われました。
実は、この当事者には直接公的な立場でそのような仕事をするべきでないと忠告したのですが、『ビジネスとして何が悪いのか』と、聞き入れることはありませんでした。
確かに、セミナー等もビジネスとしてはあり得るのかもしれません。しかし、行政の人権啓発講師として、いわば公の立場で名前を売り、市民の信頼を得て、近づいて来た人に100万円程度もの高額な契約をせざるを得ないところに持って行くのは、やはり問題だと思います。
理解や啓発を進めてくれる行政の皆さんまでも被害者になってしまう点が問題です。LGBTコミュニティ全体の信頼を落としかねない、と強く懸念しています。」
確かに、研修の講師として自分の体験を話すことも自由ですし、ビジネスとして「コンサルティング」をするのも自由です。しかし他方で、前記のように解約を希望して弁護士に相談する人達がいるのもまぎれもない事実です。この当事者は各地で講演を続けており、こういったトラブルが続くおそれがあります。
「自分らしく虹色に輝く」!?
勉強会に参加した永易至文さんは、ツイッターで、「セミナー等へ引っかかってしまう当事者をどう防ぐか」について次のように指摘しています。
「セミナーに応募し『人権講師』になりたいという人は自分の苦しかった体験を生かし、講師とおなじように自分も苦しんでいる人を救いたい、そして社会を変えたい、それこそが本当の生き方、自分のミッションだ、と意気込んで応募し、まさにそこにつけこまれて高額なセミナー費や指導料を取られている。昨今のLGBTブーム下、「本当の自分」「自分らしく虹色に輝く」というフレーズは氾濫し、承認願望にかられて惹きつけられている点では、活動家にもおなじ地盤に立っている自覚が必要だ。」
人間は誰しも「承認願望」というものがあり、自分を隠してきたり辛い経験もしたセクマイ当事者の場合、尚更それが強い面もあるのかも知れません。永易さんも指摘するとおり、「本当の自分」「自分らしく輝く」といったLGBTブームの功罪が問われているように思います。
過去の南界堂通信
- 2023年度
- 2022年度
- 2021年度
- 2020年度
- 2019年度
- 2018年度
- 2017年度
- 2016年度
- 2015年度
- 2014年度
- 2013年度
- 2012年度