エイズ対策のキーパーソンたち
堂山町入口の看板でもおなじみの、コミュニティ感覚旺盛な製薬会社
ヴィーブヘルスケア株式会社のトップ、ダスティン・ヘインズさん、
患者支援担当の笹井明日香さんに突撃インタビュー!
MASH大阪(以下M):まず、回文みたいな社名のヴィーブ(ViiV)の由来は?
ヘインズ社長:よくぞ訊いてくれました(笑)。真ん中の二つのiは現在の抗HIV薬の主流であるインテグラーゼ・インヒビター(インテグラーゼ阻害剤)をあらわしています。両側のVは、HIVのVと、生命力をあらわすVitalや「生きる」をあらわす仏語のVivreを連想させるVを組み合わせたものです。
M:なるほど。まだ新しい会社ですよね?
ヘインズ社長:そうです。約十年前、これまで抗HIV薬を開発してきたグラクソ・スミスクライン社(GSK)とファイザー社という二つの製薬会社がHIV部門を切り離してスピンオフさせてできた会社なんです。のちに日本の塩野義製薬も資本参加しています。GSKもファイザーも巨大な製薬会社ですから抗HIV薬の開発も他部門の動向に左右されやすい。ならば独立させて100%HIVに特化した新たな会社を立ち上げたほうが、長い目で見るとHIV対策の進展により寄与できるのではないかと考えたわけです。
M:競争原理に基づいた合従連衡にとどまらない、いうならばHIV/エイズの克服というミッションを見据えたスピンオフだった?
ヘインズ社長:その通りです。またエイズは陽性者だけでなく非常に社会的な側面を持つ病気であるため、1987年のAZT開発以降、治療薬開発以外の社会分野への取り組みも続けてきました。
M:エイズという病気のまわりにつくられているネットワークの特徴はどういうところにあると?
ヘインズ社長:HIVとともに生きている人たちが「黙ってはいない」という点だと。彼らは若く、少なくとも発症するまでは元気に活動できます。一例をあげると、彼らが抗HIV薬のジェネリック薬普及に果たした役割は極めて大きかったと思います。私は、HIVをめぐってつくられているネットワークは単なるネットワークの枠を超えた、「HIVコミュニティ」というべきものだと思います。私たちは会社のミッションとして「HIVとともに生きる人々を誰一人として置き去りにしない」を掲げていますが、これも私たちがHIVコミュニティに深くかかわっているからこそのミッションだと言えます。
M:そうした企業風土を守っていくために、どんなことをされていますか?
笹井:まさにそれが私の仕事なんです。ViiVはEU諸国、米国、カナダ、オーストラリア、日本などあわせて14の国々に拠点がありますが、すべてに私のような患者支援担当者がいます。
M:日本では具体的にどんな仕事を?
笹井:これまで社長主導で全社員にUNAIDSの90-90-90/ゼロ・スティグマに関するワークショップなどを行ってきました。現在は新しく入ってくる社員にHIV/エイズの持つ社会的な側面(スティグマ・セクシュアリティなど)について研修を行っています。また、HIVコミュニティへの参加を推進するため、コミュニティと一緒にゲイタウンへの啓発看板設置、HIV検査・疾患啓発イベントの企画などをしています。
M:お、それはすごい。しかし日本の課題は、最初の90(実際にHIVに感染している人たちの90%が検査につながるという目標)が達成されていないところですね。現時点では実際に感染している人たちの60%〜56%しか検査につながっていない。
笹井:この最初の数字を90に近づけるため私たちも頑張りますから、MASH大阪さんも一緒に頑張っていきましょうね。
M:おっと、思わぬ励ましの言葉をいただきました。今日は貴重なお話をありがとうございました。
ヘインズ社長 & 笹井:こちらこそありがとうございました。
◉ヴィーブヘルスケア株式会社
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