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南界堂通信〈秋号|第32号〉

男色エンタメ紀行

残された人生を自分らしく謳歌する…

進化し続けるアメリカから届いた中高年世代にじんわり響くドラマ!

アメリカのコメディドラマシリーズ「グレイス&フランキー」はNetflixオリジナル作品として2015年より放送されついこの間2020年1月に最新シーズンが公開されました。Netflixでは最長のシリーズになっています。このドラマのストーリーは家族ぐるみで仲の良かったグレイス(アカデミー賞女優ジェーン・フォンダ)とフランキー(ベルリン国際映画祭女優賞受賞のリリー・トムリン)。しかし互いの夫であるロバート(チャーリー・シーンの父、マーティー・シーン)とソル(ゴールデングローブ賞受賞のサム・ウォーターストン)が20年前から不倫をしていると告白する。2人は離婚して同性婚したいと言い始め、グレイスとフランキーの生活は一変していく...というもの。

物語の中で主役4人は70代。ロバートとソルが70歳を過ぎてから離婚しゲイとして結婚し生活を作っていくという決断をする姿も見どころですが、(語弊があるかもしれませんが)同性愛者が加害者的立ち位置で描かれるのは新鮮でありつつ、そんな印象を払拭しながら家族の在り方、老い先短い人生をどう生きるかをコメディタッチで描く様は見ていて胸を打つものがあります。

さらにこの作品にはカミングアウトや差別といったテーマに加えて、高齢者の性生活、尊厳死、薬物依存からの回復、代理出産、といったテーマも盛り込まれており、同性愛者の親や子との繋がりだけでない濃厚なストーリー展開が詰め込まれ、見始めたら「やめられない、止まらない」に陥ってしまうでしょう。

正直、私はアメリカという国にとても憧れがあり常に世界のリーダーとしてのアメリカ像というものに幻想に近いものを抱いておりました。

しかしながら、昨今の新型コロナウイルスの対応や人権問題、そしてトランプ大統領の発言などを見るに、幻想は崩れていきました。自由の国アメリカと謳われアメリカンドリームが華々しく見えた日々。無いように見せていた、偽りの平等が露呈し憧れた姿はもうありません。

ですが、この「グレイス&フランキー」を制作し全世界へ配信した底力のある国でもあります。また、ストーンウォール事件の当事者、ハーヴェイ・ミルクなど旧世代の代表者たちが見たらどう思うでしょうか。もしかすれば「グレイス&フランキー」は彼らの果たせなかった夢想の光景かもしれません。ストーンウォールから半世紀かけてやっと得たもの、築き上げた願い、叶えた未来でもあります。

変えることのできない未来と嘆かず、どうせ生きているうちには叶わないからと目を背けず、かつては夢想の遠い未来のフィクションと言われたものが、現実に起こりうるアメリカの日常としてリアルなタッチで描かれています。

最終シーズンとしての次作は2021年公開を予定されています、現在のアメリカの情勢次第で延期とも...言われていますがどんな展開になるか楽しみです。

白髪の丸太

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