海外男街通信
[ Manila ]
マニラでのNGO体験より
こんにちは。現在、長崎で公衆衛生について勉強中の不動と申します。前回は、マラウイでのHIV対策についてこの南界堂通信で体験談を書かせていただきました。引き続き今回は、フィリピンの首都、マニラで経験したHIV対策活動を皆さんにお伝えできればと思います。
皆さんの中にはフィリピンに訪れたことがある方も多くいらっしゃるかと思いますが、近年の急速な経済発展によりマニラ首都圏ではマンションやモールが立ち並び、インターネット普及率は90%にもなります。しかしその華やかな開発の一方で、公害問題や貧富の差が拡大しており、スラムや農村部では、今も感染症や貧困対策は大きな課題として残っています。
その中で、現在緊急的に対策を要する課題の一つとして認識されているのが「HIV新規感染者の増加」です。2018年の新規感染者数は13,000人と報告されており、この数は十年前と比較して約6倍増加、そして今までの感染報告件数のうち、Men who have sex with men(MSM)間での性行為による感染が、70%以上を占めています。この状況を受けてフィリピン政府でも対策は進められてきましたが、効果が十分出ているとはいえません。その要因の一つとしては、フィリピンはクリスチャンが多く、その観点から同性愛は「違法行為」として捉えられ、MSMの方に届くアプローチができていなかったこと等が考えられています。
そこで、増え続けるMSM間でのHIV感染と、政策の立ち遅れという状況から、「自分たちで仲間を守っていこう」とコミュニティの人々が自分たちでNGOを立ち上げました。その団体が、今回私がマニラでお世話になった「The red whistle(TRW)」というNGOです。メンバー全員がボランティアで構成されており、仕事を掛け持ちながら活動を続けています。しかし、政府や医療機関を含めたコミュニティからの信頼は厚く、2011年に設立されてから現在まで、マニラを中心に活動展開を継続しています。
TRWの活動に参加させてもらって特に印象的だったこと、その中の一つに彼らの「美意識の高さ」があります。外出時の日焼け止めはもちろん欠かさず、爪も手入れが行き届き、服装もいつもお洒落でした。それに比べて市場で購入した古着を着ていた私は、一緒に活動していて恥ずかしく感じる日々でした。更に、TRWメンバーを含めたコミュニティの中に存在しているこの「美意識の高さ」は、活動にも大きく影響していました。例えば、TRWのサイトでは「Save sexy」とロゴの入ったシャツを着たモデルさんが「Sexyとは何か?それは、自分自身を知っていること」という語り口から、HIV検査の大切さを訴えたりと、イメージ的なアプローチにも力を入れていました。
このようなユニークな取り組みや、そして設立当初から一貫しているHIV予防対策への活動指針がコミュニティに広く受け入れられ、TRWの活動を持続させてきたのだと思います。それぞれの国々でHIVの状況や対策は大きく異なりますが、やはりコミュニティの人がコミュニティの人をサポートしていくという姿が、とても重要かつ自然な姿ではないか、と感じました。
文◉不動 茜
社会人学生だといきごんで長崎に来てから、はや2年…今ではすっかり長崎の街に魅了されています。そんなこんなでこのまま長崎移住計画も検討中です!人生、何が起こるか分からないのがいいですね
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