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南界堂通信 秋号|第48号

時事ネタWATCH

性別変更後に
生まれても「父子」、
最高裁が認知認める!

6月21日、最高裁で、性同一性障害者の性別の特例に関する法律(「特例法」)で、性別を男性から女性に変更した方が、凍結保存された精子を使って、出産させた子どもとの関係について、民法の胎児認知(※)を認めるという判決が出されました。

事案は、Aさんは、①特例法により、法的性別を男性から女性へ変更→②女性Bに自分の凍結保存された精子を用いた生殖補助医療によって懐胎させて、子ども(C)を出産→③胎知届け出をしたが、Aさんの法的性別が女性であることを理由に届け出は不受理とされた、というものです。原審(高裁)は、認知請求は性別が男性(父)に対してするものであって、子どもの出生時にAさんの性別は女性へと変更されていたから、認知請求は認められないとしました。

ところが、最高裁は、原審を破棄して、「子は、生物学的な女性に自己の精子で子を懐胎させた者に対し、その者の法的性別にかかわらず、認知を求めることができる」と判断しました。その理由は、「生殖補助医療の技術が進歩し、性別の取扱いの変更を認めることとした特例法が施行されるなどしたことで、法的性別が女性である者が自己の精子で生物学的な女性に子を懐胎させ、当該子との間に血縁上の父子関係を有するという事態が生じ得ることとなった。」「実親子関係の存否は子の福祉に深く関わるものであり、父に対する認知の訴えは、子の福祉及び利益等のため、強制的に法律上の父子関係を形成するものであると解される。仮に子が、自己と血縁上の父子関係を有する者に対して認知を求めることについて、その者の法的性別が女性であることを理由に妨げられる場合があるとすると、血縁上の父子関係があるにもかかわらず…その者が子の親権者となり得ることはなく、子は、その者から監護、養育、扶養を受けることのできる法的地位を取得したり、その相続人となったりすることができないという事態が生ずるが、このような事態がこの福祉及び利益に反するものであることは明らかである。」という、子どもの福祉・利益を理由としたものです。

性別変更で「女性」となった者も、自己の精子で子どもを作った以上は、子どもとのあいだで法律上の父子関係が生じる、という画期的な判決です。親子/家族とは何か、父とは何か、とも問いかけるもので、同性婚をはじめ近接する課題にも影響していく可能性があります。

(※)民法
第779条 嫡出でない子は、その父…がこれを認知することができる。
第783条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。

同性カップルの住民票に
「夫(未届)」
大村市が快挙!

 本誌46号で紹介したケータさん、今年3月に長崎県大村市へ相方さんと転居しました。2人はこれまでは同じ住所に、別々の世帯でそれぞれ「世帯主」と登録していたそうですが、5月2日、世帯をひとつにする手続きを申請し、ケータさんを「世帯主」、相方さんを「夫(未届)」と表記することを求めたところ、大村市はこれを認めました。
 同性パートナーが同じ住民票で「夫(未届)」と表記されたのは、非常に画期的で快挙です。

 ところが、報道(※)によると、これに対して、総務省住民制度課は文書で、住民票は「社会保障制度の適用を判断するための公証資料」と指摘し、「異性間の事実婚に使われる「夫(未届)」の記載を同性カップルに用いれば、各種社会保障の窓口で住民票の続柄のみで適用の可否を判断できなくなり、実務上の支障を来す恐れがある」と説明したそうです。松本総務大臣も、記者会見で、大村市に「(総務省の)助言を踏まえて判断してほしい」と求めたそうです。
 大村市の市長は、現時点では表記は修正しないとしているようですが、今後どうなるのでしょうか…注目してきたいと思います。
(※時事通信ニュース7月9日)

【 お知らせとお詫び 】
今号で「神社で同性パートナーと神前結婚式をしようとしたら…(後編)」を掲載予定でしたが、今回のニュースがあり次号以降とさせて頂きます。
申し訳ありません。

日本女性学会の分科会で
「トランス問題」が?

 以上二つのニュースのように、世の中の動きは急ピッチで前に進んでいるようですが、一方では、こんなニュースも。

 6月、東京で開かれた日本女性学会で、「トランス問題」と「フェミニストの表現・出版・学問の自由」を取り上げた分科会があったそうです。学会のプログラムの9頁に、発表の概要として、
●「今日、トランス問題をめぐって、左からの脅威がより深刻なものとなっている」
●「トランス問題をめぐって、フェミニストの表現・出版・学問の自由が脅かされている」
●「sex based rightsを擁護するフェミニストのまっとうな表現が、「トランス差別」だとして抑圧されている。」
等と書かれています。その分科会の司会者の公開されているFacebookの投稿には、「これは歴史的なイベントです。なぜなら、トランス運動ないしトランスイデオロギーを主題とし、かつそれに対して明確に批判的な学術イベントが、ネット上の企画以外で行なわれたのは、おそらく今回が初めてだからです。」と書かれていました。

 参加した知人(レズビアン)の報告によれば、「トランスジェンダーに対して嘲笑的な場だった」、とのことでした。
 とてもびっくりしました。「女性の安全」が守られるべきことに異論はありませんが、ただ、一部のフェミ(?)が反トランスにまわるのはなぜなのでしょうか…(この問題も引き続き追っていきたいと思います)