海外男街通信
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遠くを見ることが半径5メートルにいる人たちとのつながりに活きてくる[後編]
反同性愛の法や迫害があるアフリカのウガンダやケニアで、LGBT難民のサポートをされているFHIジャパン代表の植田祐介(うえだ・ゆうすけ)さん。
今回はインタビューの後編をお届けします!
MASH大阪(以下M):前編では、韓国やアフリカ諸国でのアンチLGBT運動の背景には米国の原理主義的キリスト教右派の活動があること、反同性愛法のあるウガンダのLGBTの一部の人たちはケニアで難民化していること、彼らの活動を支えるため、ゆうすけさんがFHIジャパンを立ち上げ、支援活動を行っていることを聴かせていただきました。ケニアでの難民キャンプにおけるLGBTの人たちの活動について、もう少しお聴きしたいです。
植田祐介(以下、植):当事者たちがシェルターやレストランを作り運営を始めても、国内の情勢が不安定な時は攻撃が一層強まり運営がままならないことも現実にあります。脅迫等でどちらも閉鎖を余儀なくされたこともあります。でもそんな中、難民キャンプで世界で初めてのLGBTパレードがケニアで行われました。そうしたことを今後も発信していきたいと考えています。彼らを取り巻く環境の厳しさを知ってもらいたいのと同時に、希望や楽しみを忘れない力強い姿勢も伝えたい。
M:具体的な計画は?
植:このクラウドファンディングでいただいたお金がどのように使用されているかについては、レストランやシェルターを訪れ、そこにいる人達と交流し、その報告会を日本で行いたいと考えています。ZINEも作成する予定です。この渡航には、日本国内外で差別や排除に抗う活動を共にしてきたジャーナリストから同行したいというオファーがありました。自分とは違う経験をしてきた人達の目とペンを通して伝えてもらうことで、新たな拡がりが生まれることを期待しています。それから、ケニアやウガンダの人達が作る物を日本に紹介もしたい。LGBTのコミュニティだけでなく地域の人たちの利益に繋がることがしたいなと思っています。
M:クラウドファンディングへの反響は?
植:目標額以上を達成しました。今回クラウドファンディングのための説明会を日本国内でも行いました。今後は大都市だけではなく、たとえば愛媛や天草などでもやりたい。
M:天草!キリスト教迫害の歴史で有名な土地ですね。植:そうなんです。興味深いのは愛媛には技能実習生が多くいるし、天草のキリスト教迫害の歴史も現代と繋がっているなと思えることがあって。
M:どんな点でですか?
植:例えば天草では、お寺や神社がキリスト教徒を匿っていたのですね。なぜかというとキリスト教信者の人口は当時の天草では多数派です。だから彼らが迫害されたりいなくなったりすることは天草の暮らしを揺るがす一大事だった。信仰を越えて人は繋がっていて、暮らしが双方で成り立っていく。迫害を野放しにしたら地域が崩れてしまう。共生がキーになるという点で現代の日本の課題ともリンクしていると思います。
M:信仰の違いを越えたコミュニティが天草に存在していたこと、初めて知りました!ただ現代の日本にいると他の国、遠い地域のことを身近に感じづらいと思うことがあります。今後は色んな地域からの移住者だけでなく、日本から移住する人も増えていくだろうし、距離に関わらず関心を持つ為にはどんなことがヒントになると思いますか?
植:日本にだって技能実習生などで海外からやってくる移住者がいますよね。その中でLGBTの人達は出身国のコミュニティではそのことが言えなかったりもする。現に性的少数者であることで自国に居られなくなった人が日本で難民申請をし、通った事例もあります。こうしたことが、NOTALONECAFE(※1)の設立にも繋がっています。それから暮らしが困難になる状況を孤立という点で見ていくと、日本人にもたくさんいるわけです。安全な居場所が欲しい、健康に暮らしたいという願いはどこにいても共通しています。遠くのことを近場で話していると、半径5m以内の人達の困りごとにも気づきやすくなってきたなという実感があります。
M:魅力的なお話をたくさんうかがうことができました。ゆうすけさんのナマの声での報告会、ぜひ大阪でも企画したいです!とても貴重な時間をありがとうございました。
(※1)NOTALONECAFE
海外からの移住者など外国籍移住者のLGBTQの交流カフェイベント。東京で始まり、現在大阪でも定期的に開催。詳細はdistaホームページをご覧ください。
シェルターの裏に借りた土地で農作業
チャパティを焼くエバンスさん
ナイロビ市内の公園で寝泊まりするLGBT難民
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植田祐介
1974年大阪生まれ、韓国に留学し帰国後に韓国語翻訳者として活動、FHIジャパン代表