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南界堂通信 夏号|第47号

時事ネタWATCH

同性パートナーの
権利保障を大きく進める2つの判決

この3月、同性パートナーの権利保障を大きく進める裁判の判決が2つ出されました。
順に紹介していきます。

●札幌高裁が「同性婚を認めていない民法は憲法24条1項に違反!」

本誌でも度々紹介していた「結婚の自由をすべてのひとに」訴訟。2019年に裁判が起こされ、全国5カ所(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)の地方裁判所で裁判が続いていましたが、順次、判決が言い渡され(本誌35号~)、審理は各高等裁判所に移っていました。初めての高裁判決が、3月14日、札幌高裁で言い渡されました。
札幌高裁は、民法等の婚姻に関する諸規定は、憲法24条及び14条1項に違反すると判断しました。
「性的指向及び同性間の婚姻の自由は、憲法13条によっても、人格権と同様に、重要な法的利益と解される。そして、憲法24条は、憲法13条を受けて定められており、同条1項が同性間の婚姻を文言上は直接的に保障していないとしても、同条2項が定めるとおり、個人の尊厳が家族を単位とする制度的な保障によって社会生活上実現可能であることを踏まえると、同条1項は人の人との間の婚姻の自由を定めたものであって、同性間の婚姻についても、異性間の婚姻と同程度に保障する趣旨であるというべきである。…ところが、本件規定は、同性間の婚姻を許しておらず、同性愛者は婚姻による社会生活上の制度の保障を受けられない。このことにより、社会生活上の不利益を受け、その程度も著しいということだけでなく、アイデンティティの喪失感を抱いたり、自身の存在の意義を感じることができなくなったり、個人の社会的な信用、評価、名誉感情等を維持することが困難になったりするなど、個人の尊厳を成す人格が損なわれる事態となってしまっている。」などと述べた上で、現行法の規定が憲法24条に違反すると判断しました。この訴訟で、憲法24条違反を認めた判決は初めてです。今後の高裁、そして最高裁判決が注目されます。

●最高裁が「同性パートナーも遺族給付金支給の「配偶者」に該当しうる!」

3月26日、最高裁判所は、同性パートナーを殺害された男性が、犯罪被害者等給付制度に基づき遺族給付金の支給を求めた裁判で、控訴審判決を破棄し、犯罪被害者と同性の者であることのみをもって犯給法5条1項1号の「配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者)」に該当しないとすることは同条項の趣旨に照らして相当でなく、法律上同性のパートナーも「配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者)」に該当しうると判示する判決を言い渡しました。
この事件は、20年以上もの間、生活を共にしてきた同性のパートナーを殺害された男性が、「事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」として、犯罪被害給付制度の遺族給付金の支給申請をしたことに対し、愛知県公安委員会が、被害者と上告人が法律上同性であることのみを理由に不支給裁定をしたため、その取消しを求めていました。
一審の名古屋地裁及び控訴審の名古屋高裁は、同性同士のカップルを異性同士の法律婚関係と同視する社会通念または社会的意識が醸成されていないことを理由に、犯給法上の「事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」には同性パートナーは含まれないとして、同性カップルは犯給法上の事実婚配偶者にあたらないと判断していました。
これに対し、最高裁は、次のように判示し、同性カップルも事実上婚姻関係と同様の関係にある者に該当しうると判断しました。
「犯給法5条1項1号が…『婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者』を掲げているのも、婚姻の届出をしていないため民法上の配偶者に該当しない者であっても、犯罪被害者との関係や共同生活の実態等に鑑み、事実上婚姻関係と同様の事情にあったといえる場合には、犯罪被害者の死亡により、民法上の配偶者と同様に精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられるからであると解される。しかるところ、そうした打撃を受け、その軽減等を図る必要性が高いと考えられる場合があることは、犯罪被害者と共同生活を営んでいた者が、犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえない。
以上によれば、犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう『婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者』に該当し得ると解するのが相当である。」
本判決は、同性のパートナーが犯給法5条1項1号の定める「配偶者」である「事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当しうることを正面から示した初めての判決です。今後、大きな意義を持つと言えるでしょう。

お知らせとお詫び

前号蜀載の「神社で同性パートナーと神前結婚式をしようとしたら…(前編)」の後編は、今号に予定でしたが、前記2つの判決が出ましたので、次号とさせて頂きます。申し訳ありません。