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南界堂通信 夏号|第47号

男朋友

「大阪のハッテン場施設は、
当初からゲイタウンの性的健康の増進に積極的に取り組んでこられました」

昨年のロイヤルと北欧館の閉店で大阪のハッテン場状況は大きく変わろうとしていますが、そもそもハッテン場は、
大阪ゲイタウンの性的健康向上にどんな役割を果たしてきたのでしょうか?
MASH大阪で長年アウトリーチを担当するトシオさんにお話しをうかがいました。

MASH大阪(以下M):そもそもアウトリーチとは?

トシオ(以下、T):MASH大阪が製作した性感染症予防の資材や情報を、ゲイバーやハッテン場に直接届けること、を私たちはアウトリーチと呼んでいます。

M:アウトリーチはいつ始まった?

T:2000年に臨時検査イベントSWITCHの広報を配布したのが最初だと思います。2001年には堂山の路上で(!)コンドームを配布、2002年にはSWITCHの報告をSaL+(サルポジ)ゼロ号で配布、以降、サルポジを毎月配布することでアウトリーチが定着します。

M:ここからはハッテン場へのアウトリーチに限ってお話をうかがいたいのですが…

T:ハッテン場向けの本格的なプログラムは2003年の〈ためしてハッテン〉ですね。プログラムの目的は、安全にセックスできる場の提供を支援すること、それからハッテン場=性感染症の温床、というネガティブなイメージをポジティブなものに変えること、この2つ。プログラムの内容は、コンドーム付き壁貼りパネルを製作してハッテン場の壁に設置してもらう、コンドームの入った樹脂製小ケースを設置してもらう、この2つでした。

M:ハッテン場施設の反応は?

T:果たして協力してもらえるのか、不安でいっぱいでしたが、企画書を作成し、施設を訪問して協力を依頼したところ、意外にもスンナリと協力してもらえました。この時期、堂山のバーの中には「最初に入ってくるのがボランティアさんだと客足が悪くなるのよね~」といったイケズな対応もあったのですが(ミナミや新世界ではそんな対応は皆無でした)、ハッテン場施設では、前のめりでこちらの言い分に耳を傾け、丁寧に、ある意味ビジネスの一環として応対していただいた。その背景としては、ハッテン場のオーナーさん達、スタッフさんのあいだにHIVを始めとする性感染症の広がりに対する危機意識がすでに共有されていたことが大きかったと思います。当時、海外のハッテン場施設が閉鎖された、といったニュースも流れてましたし、5メオなど合法(当時)ドラッグ濫用者にどう対処するかという懸念も共有されていました。

M:正面から性感染症対策に取り組もうという姿勢があったわけですね。その後の展開は?

T:2005~2009年には激エロポスター〈つけてヤろうぜ〉を配布、その後2009年には、「コンドームは予防具」のイメージを一気に定着させるため、まとまった数のコンドームとローションのセットを配布しました。2012年には、同年に始まったクリニック検査キャンペーンの広報の一環として、ハッテン場専用のマグネット型フライヤーを開発し、施設のロッカーに貼り付けてもらいました。ところが、マグネットに書かれている割引条項をハッテン場施設の割引だと勘違いする方たちが続出。オーナーさんたちと協議して、透明のマグネット・ポケットに資材を詰めるかたちに変えました2016年には〈ヤる!プロジェクト×Yes! SaferSeX〉キャンペーンとしてコンドーム、ローション、ウェットティッシュ、ポスターを設置してもらいました。2020年からコロナ禍に入って大変な中でも、性的健康の増進に大きく貢献されました。コロナ禍に実施した郵送検査キットの配布プログラムの際にも協力していただき、店内で郵送検査キットを配布させてもらいました。店内に郵送検査キット配布案内のポスターの設置はすべての店舗にご協力頂きました。

M:昨年店じまいしたロイヤルと北欧館については?

T:両店とも、店内の随所に本物志向のオブジェ―ムラカミ・タカシのフィギュア、ルイヴュトンの年代物トランク、ステンドグラスをあしらったアンティークのランプ、クリスタル製イルカのオブジェ、戦前のゲイの画家による大作絵画、西洋式の甲冑など―が置かれていて、ひとつの文化的空間が演出されていました。「ここを訪れる客は英国紳士のように振る舞ってほしい」というこだわりが感じられるようで、他店とは全く違う個性を放っていましたね。

M:興味深いお話、どうもありがとうございます。

昨年12月に京都で開催された日本エイズ学会の会場で展示されたNGOブースの1コマ。MASH大阪がアウトリーチで配布している資材がたくさん見えていますが、さて、ここにないのは何でしょう?