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News Paper

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南界堂通信 夏号|第47号

追っかけエイズ

大阪市のエイズ対策
〜先駆的な取り組みをめざして〜

先日、ある政令指定都市のエイズ対策担当者から「大阪市はなぜ、新規HIV感染者数が他都市と比べて順調に減少しているのか理由を教えてほしい」と訊かれました。その政令指定都市での審議会で話題となり、対策の参考としたいとのことでした。新規HIV感染者数が減少に転じている理由について改めて問われ、次の3点が主な理由ではないかと考えました。
1点目は、検査体制が充実していることです。大阪市では、毎日どこかで検査が受けられるよう、夜間・休日も含めて実施しています。大阪市においては、日本で初めてエイズ患者が報告された1986年より、大阪市内各保健所においてエイズ相談を、翌1987年にHIV抗体検査を開始し、大都市の特性に応じた検査体制の整備を行っています。コロナ禍でも1回目の緊急事態宣言時に約1ヵ月程度、検査を中止した以外は、コロナ前の検査体制を継続してきました。2020年度の大阪市の検査受検者数は、前年から38.3%減少しましたが、全国の減少率は51.5%であり、比較的、検査受検者数が保たれていました。2022年度以降は、梅毒流行の報道の影響を受け、検査受検者数が増加した影響でコロナ前の受検者数まで戻ってきています。MASH大阪と協働で実施している、「distaでピタッとちぇっくん」は、2014年度にイベント検査を実施したことからはじまります。2018年度からは、MSMコミュニティの中で「受けやすい検査環境」を目指して常設検査としました。最近は、PrEPやU=U、梅毒に関するご相談を多くお受けしています。ほかにも、北区保健福祉センターで第5金曜日の夜間に夜間検査を実施するなど、受検者の利便性を考慮した検査相談体制の構築を目指しています。
2点目は、大阪市は、NGO等の団体に恵まれており、日々の連携の中で、普及啓発や検査相談体制の構築等の対策に貴重なご意見をいただき施策に反映できていることです。
3点目は、大阪市エイズ対策基本指針に基づいた多岐にわたる施策の展開です。2006年の国の指針の改正時に、「国と十分に連携して積極的に施策を推進されたい」として、「人口10万人に対する新規HIV感染者・エイズ患者報告数が全国平均以上の自治体を重点的に連絡調整すべき都道府県等」を定め、大阪市はその1つに選定されました。これを受け、2007年に「大阪市エイズ対策基本指針」を策定し、以降、大阪市は5年ごとに評価の上、新しい指針を策定し、2012年4月に第2次、2017年10月に第3次、そして2022年10月に第4次基本指針を策定しました。大阪市の指針は国や他の自治体にはない数値目標を設定することで目標を明確化し、目標の達成度を確認しながら、現状と課題を整理して計画的に取り組みを継続してきました。また、2点目で述べたNGO等の団体が指針の策定段階から参画いただいて評価委員にも加わっていただいていることで、ブラッシュアップされたエイズ対策が推進できている大きな理由だと考えています。
これらの対策が新規HIV感染者の減少につながっていると信じています。
今後も引き続き取り組みを推進していきたいと思います。
(大阪市保健所感染症対策課)