エイズ対策のキーパーソンたち
片手間でやるはずが、社会規範と闘うことも辞さず!
セックスワークの現場でワーカーの健康増進に取り組む要さんに突撃インタビュー!
MASH大阪(以下M):活動を始めたのはいつ頃ですか?
要さん:1997年だったと思います。その頃東京でセックスワーカーの自助グループを始めたところだったのですが、京都にUNIDOS(ウニードス)というグループがあるのを知って、京都に通いはじめた。UNIDOSはセックスワークの非犯罪化を要求する団体で、京都大学の大学院生たちが中核を担っていた。京都のアートスケープというところで延々議論してましたね。
M:研究者とワーカーが協働したという点で画期的だった?
要:そうなんですけど、当時の私は20歳の、社会のことも政治のこともよくわかっていない若輩者、彼らは私からみたらすごい優等生のお姉さん、お兄さんたちで、なかなか議論についていけない。共通の言語を見つけるのに必死になった時期でした。そのとき思ったのは、優等生とそうでない人とが一緒に活動すると、書類づくりなどメンドウな仕事は優等生が引き受けるはめになって、疲弊していく。優等生がいなくなると「私がやらな!」って思って、パソコンの使い方、企画書の書き方から学んでいくわけですが、そうやって初めて、優等生の人たちにどれだけ自分が負担をかけてきたかがわかったんです。
M:そうした経験から学んだことが今の活動に活きている?
要:ある意味そう。必死に努力するのではなく、片手間でやっていけることをやる。そういう人たちの活動をうまくコーディネートできればよい、と考えるようになりました。そうしたスタンスで、1999年に立ち上がったSWASHという団体に関わるようになり、「セックスワークの現場にとって利益になること」をミッションに掲げて活動を続けてきました。
M:MASH大阪が立ち上がったのが1998年ですから、ほぼ同じ時期ですね。
要:ええ、MASH大阪と同じように私たちも研究者と協働体制を組み、セックスワーカー向けの性感染症予防の啓発資材を開発し、配布したり、オーナー研修や相談員研修を行ったり、調査に協力したり、当事者向けイベントを開催したりしてきました。これまで4人の研究者を通じて厚労省の研究班に参加してきましたし、厚労省の研究費だけでなく、フェミニズム基金、リーバイス基金、エイズ予防財団、UNODC(国連薬物犯罪事務所)などの助成金、補助金などで活動を続けてきました。
M:そのあたりのこともMASH大阪と一脈通じるものがありますが、要さんから見て、MASHとSWASHでは何が同じで、何が違うと思われますか?
要:研究者と協働しつつ、当事者の目線で、当事者の性的健康を向上させようという目標までは同じだと思うのですが、違う点がふたつあると思います。ひとつは、ゲイであることというのは一生ついてまわるアイデンティティでもあるから、コミュニティらしきものがつくられやすいのに対し、セックスワークを一生やっていこうって考える人はほとんどいない。仕事に貼られた名前にすぎず、コミュニティが形成されにくい。もうひとつは、社会の中にセックスワーカーを差別しタブー化する傾向が強固にある、ということ。差別観をあえて言葉にあらわすと「差別されるとわかっていてその仕事選んだんでしょ?」とか「女を売るなんて……」ということになるかな。
M:そういう思い込みや差別と闘うということも活動の重要な一環となる……?
要:そう。SWASHの活動に協力的なフーゾク店の経営者が、コロナ禍での持続化給付金の対象からフーゾク産業が外されたのは違憲だとして訴訟を起こしているんですけど、その裁判を支援するとかもしてます。
M:とても片手間でやれる仕事とは思えないですねぇ……
要:実はそうなんです。私、7年に1度バーンアウトするんです(笑)。でもね、さっきゲイの活動とセックスワーカーの活動の違いについて述べましたけど、共通することもある。それは、さっき言った「女を売るなんて……」が「男のくせに……」とつながっているところだと。性のあり方について社会規範はいろいろ言ってくるんだけど、性のあり方というのは、私はやっぱり自分で決めたい。「アタシの性のあり方はアタシが決める!」ってこと。
M:「アタシの性のあり方はアタシが決める!」って、カッコよすぎでしょ……汗
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