時事ネタWATCH ─ 中高年MSMと暮らし ─
同性婚の法制化を求める裁判が始まる!
同性婚の法制化を国に求める裁判が、この2月に全国で提訴との報道です。
本誌15号でも、米国の同性婚活動家エヴァン・ウォルフォソンさんの講演を紹介しました。
その後3年間、様々な動きが起こっています。
【東京】台湾人パートナーか配偶者として在留資格を求める
日本人の同性パートナーと同居してきた台湾籍のGさんが、在留資格を求める裁判を起こしています。支援団体(「ぷれいす東京」の生島嗣さんも)によれば、次のとおりです(※1)
「パートナーは、僕にとって唯一の家族です。男女の夫婦のように、愛し合っている大切な存在です。僕はこれから先もずっとパートナーと共に暮らし続けたいと、強く願っています。」(裁判でのGさんの意見陳述)
2018年12月、2人の尋問があり、「(相手は)生きていく上でなくてはならないパートナー」等と発言した。不法滞在でも、日本人と法律婚・事実婚の関係にあれば「在留特別許可」が認められうるが、日本には同性婚の制度がない。Gさんは、同性愛者にも在留特別許可を出すべきだと主張している。
2人が出会ったのは1993年。ほどなく、GさんがXさんの家に移り、同居生活が始まった。GさんがHIV陽性となったときは、不法滞在で健康保険がきかないため、主にXさんが経済面、心身面でGさんを支えた。逆にXさんが抑うつ状態になったときは、Gさんが奮闘。互いに補い合って、25年間ともに暮らしてきた。尋問では、代理人弁護士から「結婚とはなにか」を問われるシーンもあった。Gさんの答えは、「愛し合っている人、生涯支え合う人と一緒にいること」だ。現行法では、結婚(同性婚)できないものの、「私たちは強い絆で結ばれていると強く信じています」。
裁判は次回は3月で、結審し、近々判決が出されます。弁護団長の永野靖弁護士は、「この裁判は、同性パートナーの法的保障に関する日本で初めての裁判で、同性間のパートナーシップが法的保護に値することを裁判で確認する意義は大きい。」と話しています。
【名古屋】同性パートナーが配偶者として遺族給付金を求める
名古屋でも同性パートナーが「配偶者」との認定を求める裁判が起こしました。弁護団によれば次のとおりです。
2014年、名古屋市で同居していた男性カップル(Uさん&Aさん)の内の1人(Aさん)が、犯人に殺害された。犯人は殺人罪で有罪となった。刑事裁判の判決は、UさんとAさんは「夫婦同然の関係にあった」と認定している。2人は約20年間、共に生活していた。2人は最後にUさんの実家で同居し、Aさんは仕事も辞めてUさんの老母の介護をしていた。2人が「夫婦同然」の共同生活を送っていることはUさんの勤務先も公知で、Uさんの依頼で彼の給料はAさんに渡されていた。
2016年12月、Aさんを喪ったUさんは、愛知県公安委員会に、犯罪被害者(遺族)給付金を申請したが、公安委は、2人は同性同士なので、Uさんは被害者の「配偶者」に当たらないという理由で不支給を決定した。
そのためUさんは、決定の見直しを求めて、2017年7月、名古屋地方裁判所に提訴した。
犯罪被害者給付制度とは、「犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族(等)の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、犯罪被害等を受けた者に対し犯罪被害者等給付金を支給」するもので、支給対象の遺族(第1順位)は、被害者の「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)」です。
Uさんの弁護団は、同性パートナーも、生活実態が「夫婦同然」である以上は、「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)」にあたると主張しています。
【大阪】同性パートナーの遺族に財産の引渡等を求める
この大阪でも、同性パートナーと死別した男性が相手の遺族(故人の妹)を訴えるというニュ ースが流れました。報道によれば次のとおりです。
Xさんは、学生時代に知り合った男性パートナーと、1971年頃から同居を開始、2人の自営業収入をもとに生計を立ててきた。2人の同居はパートナーの姉Yさんも認識していた。両者は、余生についても話し合っていたが、2016年3月、パートナーが75歳で急逝した。Xさんは連れ添った伴侶として葬儀を営むことを希望したが、姉Yさんは拒み、葬儀では一般参列者として扱われた。Xさんは、2018年4月、生前にどちらかが死亡した場合は、残った方が余生を無事送れるように共有財産を贈与される事で合意していたと主張して、Yさんに対して財産の引渡や、差別によってパートナーを弔う機会を奪われた等として慰謝料を求める裁判を提起した。
財産について書面があったかは報道では定かではありませんが、現在も大阪地裁で裁判中です。
【電通調査】「同性婚の法制化の賛成派は 78.4%」
こうした同性パートナーの法的権利をめぐる裁判が続く中で、同性婚の法制化を求める裁判が起こされます。また1月、電通は、「LGBT調査2018」を公表し、同性婚の法制化について「賛成」「どちらかというと賛成」と答えた「賛成派」の割合が計78.4%にのぼったとしています。
興味深いのは、LGBT当事者の支持率の方が全体よりも低いことです。「自分には関係ない」「ほっておいて欲しい」等と感じる冷めた当事者も多いのでしょうか。とはいえ、現実には紹介したような問題も起こっている訳で、全く他人事ではないかもとも…(皆様またご意見お寄せ下さい)。
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