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南界堂通信〈春号|第26号〉

男色エンタメ紀行

田亀源五郎×シモーヌ深雪トークショウ
ゲイ・エロティック・ アートの魅力

2018年11月17日〜12月16日にかけてコミュニティセンターdistaでは田亀源五郎さんの個展「淫画」が開催されました。展覧会初日に実施された田亀源五郎さんとシモーヌ深雪さんのトークショウをレポートします!

おふたりの馴初めからトークショウはスタート。お互いに無名の素人だったころ、当時はまだ別のペンネームでゲイ雑誌に投稿されていた田亀さんのイラストを見たシモーヌさん。「BGMがイラストと共に記されていて、単なるイラストではなく、その音楽と合わせて楽しめるものは珍しく、そういった意味でも当時から人を惹きつける魅力的なイラストだった」と田亀さんの第一印象を振り返りました。それをきっかけに文通欄を通じて手紙のやり取りをしている内に、お互いマニアックなB級映画やアートが好きだという事が分かり、「あれ見た?」「これ見た?」「このアーティストおすすめだよ!」なんていうやり取りを長く続けていましたよね」と田亀さん。旧知の中だからこそ繰り広げられる楽しいお話に、会場の緊張感も一気に和んだように思います。

おふたりが影響を受けた海外のアーティストの作品を会場のスクリーンに投影しつつ、古典から現代までの「ゲイ・エロティック・アート」を振り返るというスタイルでトークショウは進行されました。ジョージ・クエインタンスが描いたマタドール(闘牛士)のイラストを紹介しながら、

田亀源五郎×シモーヌ深雪トークショウ

シモーヌさん:田亀さんには、以前から闘牛士が主人公のマンガを描いて欲しいと言ってるんですよ。

田亀さん:確かに何度も言ってくれていますが、闘牛士の服には刺繍が施されていて、細部に至る描写も大変そうなんで「絶対描きません!」とお断りし続けています。

シモーヌさん:今はこう言っていますがいつかは描くかもしれませんし。

田亀さん:いやいや、描きませんから。

というおふたりの応酬に、会場からは笑い声もあがりました。

ご自身が最も影響を受けた七十〜八十年代のアーティストを紹介するコーナーでは、トークにも熱が入る分、会場の皆さんも食い入るように田亀さんのお話に聞き入っていました。お友達でもある現代アーティストの紹介中で印象的だったのは、ゲイ雑誌のようなイラストを発表する媒体がどんどん減っていると同時に、エロティック・アートに価値を見出してくれる出版社も少なく、創作活動を継続していく事が厳しい状況に陥っている有能なプロのアーティストがたくさんいること。またその反面、インターネットが普及したことで、エロティック・アートのような過激な要素を含んだ作品を、アマチュアの方々が個人のブログなどで発表していたり、既成の手法にとらわれない独創性の強いオルタナティブ・アートの流れを汲んで創作活動を続け、画集が出版されたアーティストがいることなども明かしてくださいました。

そして話題はNHKでもドラマ化された「弟の夫」へ。第十九回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第四十七回日本漫画協会優秀賞と社会的にも評価を受けている中、「これだけが田亀源五郎だと決めつけてもらっては困る」というシモーヌさんに対し、「そのあたりは私の父親も同じような危惧を抱いています」と田亀さん。「弟の夫」のような社会一般向けのマンガを描いたことで、「田亀はエロ路線から方向転換した」と仰る方もいますが、私自身は方向転換したつもりもないですし、「弟の夫」と同時進行でゲイ雑誌用のエロマンガも描き続けていました」と田亀さん。「ゲイ・エロティック・アートの第一人者として、これからも田亀さんには「外道」を追及したアート作品を描き続けて頂きたい。いま皆さんを取り囲んでいる作品もすべて「外道」な作品ばかりですが、これこそがゲイ・エロティック・アーティスト、田亀源五郎の真骨頂でありますので、作品の隅々までしっかりとご堪能下さい」とシモーヌ深雪さんに締めくくられたトークショウ。

「レザーを着込んだマッチョなヒゲ野郎」や「角刈り刺青兄貴」といった比較的軽めの作品から、SMテイスト満載のハードエロの作品まで、田亀源五郎さんの世界観をたっぷりと堪能できる作品が二十二点も並んでいて圧巻の一言に尽きます。五年に渡りゲイ雑誌「バディ」で連載されていた「銀の華」。連載用のマンガは〈ペン・インク・スクリーントーン〉で描かれているのに対し、復刻版「銀の華」の扉絵は〈毛筆・ペン・墨・ホワイト・スクリーントーン〉と、同じ作品でも描写技法は細かく異なっており、イラストだけではなく、田亀さんの緻密な作品作りまでをも楽しめる展覧会。イベント終了後も熱気に満ちた会場では、田亀さんのサインを求める方や、一緒に記念撮影をされる方々で大いに賑わっていました。田亀源五郎さん、シモーヌ深雪さん、お疲れ様でした。ありがとうございました。

今回の展覧会/トークショウは、世界中で広がりつつあるHIVとの新しい向き合い方を発信するHIVpreventionupdateU=UPROJECTの一環として開催されました。
「U=U(Undetectable=Untransmittable)」とは直訳すると、「(HIVが)検出限界以下になる=感染しない」という意味になります。治療を6ヶ月以上続け検出されない状態(Undetectable)になれば、感染しない(Untransmittable)という、世界規模で推奨されている最新の啓発メッセージです。

田亀源五郎・シモーヌ深雪

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