community center dista

ニュースペーパーNEWSPAPER

南界堂通信〈秋号|第28号〉

男色エンタメ紀行

ゲイ・エロティック・アーティストの生涯を描いた
映画「トム・オブ・フィンランド」
テレビドラマで描かれるLGBT…
2017年製作/116分/R18+/フィンランド・スウェーデン・デンマーク・ドイツ・アメリカ合作/原題:Tom of Finland/配給:マジックアワー

ゲイ・エロティック・アーティストの第一人者と言っても過言ではないトム・オブ・フィンランド。「レザー野郎」や「水兵さん」「タンクトップ兄貴」など「マッチョなヒゲ兄貴」をベースに、SMやハードコアな世界観を描いている。ファッションデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエ、写真家のロバート・メイプルソープ、アンディ・ウォーホルや「QUEEN」のフレディ・マーキュリーなど、彼の作品に影響を受けたアーティストやクリエイターも多い。そういえば昨年公開された「ボヘミアン・ラプソディ」でも、全身レザーでキメ込んだフレディ・マーキュリーが描かれていました。

そんな彼の生涯を描いたドメ・カルコスキ監督の「トム・オブ・フィンランド」、映画の舞台は第二次世界大戦のフィンランドから始まります。当時のフィンランドでは同性愛はタブー視されており、性欲を発散させるためには秘密裏に出会いを探すか、絵を描いて自分の世界観を作り出す以外なく、トウコ・ラークソネンも、理想的な男性像をスケッチブックにしたためていた。時代は違えど、このような窮屈感はセクシュアル・マイノリティであれば誰でも一度は感じるものではないかと私は思う。

そんなトウコはアメリカのフィットネス雑誌の広告に応募、採用されたことをきっかけに、彼の作品は次第にゲイ・コミュニティで認知されるようになった。彼の描く「マッチョなヒゲ兄貴」像は、ポジティブなゲイ・アイコンとなり、ゲイ・コミュニティの象徴となっていく。それと同時に、アメリカではエイズが流行し同性愛者に対する弾圧や迫害運動が強まっていく中、友人をエイズで失ってしまう。「エイズは死なない病気」という認識を持って今を生きているボクにとって、エイズが猛威を振るいバタバタとゲイが亡くなっていくという状況を考えただけでも恐ろしさと不安に苛まれる。

ゲイ・カルチャーの歴史をトムの視点から簡潔にまとめた作品だったこともあり、二十二歳のボクには歴史的に趣深い映画だという印象が残りました。しかし「戦争」「平和」「人権」「同性愛」「HIV/エイズ」といった様々な訴えかけがあった故、作品そのものにこれと言った強いメーセージ性を感じなかったのも事実である。このようなホモ・ノーム(※1)な価値観は私の中では少し古いと感じる。私自身「エイズ運動」や「プライドパレード」が最も活気があった時代より後に生まれてきた世代だからかもしれないが、深く共感を得ることはできなかった。

(※1)ゲイの普遍的な価値観。特に屈強な肉体を持つ男性的なゲイを魅力的な価値観として置く価値観と筆者は解釈する
とっくん

22 歳、関西の大学卒業。大学では「マッチングアプリとゲイコミュニティ」について研究。学生時代アメリカ留学を経験し、多様性について学ぶ。趣味はNetflix で「ルポールのドラァグレース」を見ながら筋トレをすることです。

過去の南界堂通信

2023年度
2022年度
2021年度
2020年度
2019年度
2018年度
2017年度
2016年度
2015年度
2014年度
2013年度
2012年度

過去のいくナビ

2022年度
2021年度
2020年度
2019年度
2018年度
2017年度
2016年度
2015年度
PAGE TOP