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南界堂通信〈夏号|第27号〉

時事ネタWATCH ─ 中高年MSMと暮らし ─

トランスジェンダーと女風呂?

松浦大悟さん「女湯に男性器のある人を入れないのは差別」

今回は、(本誌の読者層とは少し別かも知れませんが)関連する話題です。

お茶の水女子大等が、トランスジェンダー女性(女性として生活する性別越境者)の入学を認める方針を発表しました。

他方、それに反対する自称「フェミニスト」の動きもあるようです(注)。
(注)それに対して、以下の声明が出されています。「【声明】トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明」 有効署名数は、2,700名超の模様。

そんな中、「みのもんたのよるバズ!」で、1月5日、LGBTの法案の討論番組がありました。同性婚から性同一性障害特例法の手術要件に話題が移った際、元参議院議員で(ゲイの)松浦大悟さんが野党のLGBT差別解消法案とトランスジェンダーの入浴を絡める発言をしました。

この松浦さんの「(女湯に)男性器が付いている女性だという人を入れなければ差別だということになる訳ですよ」という発言は波紋を呼びました。

松浦大悟さん発言の内容

…性同一性障害特例法が日本では2003年に出来て、手術をすれば性別変更ができるようになったんです。でも、それさえ差別だと、手術を健康な体に求める事は人権侵害という事で、手術をしなくても性別移行ができるようになってるのは世界の潮流なんですね、それで性自認が女性だとなれば、男性器が付いていようとも、女性更衣室に入れなきゃいけないとなっているんですね、それについてフェミニストの人たちが大反対をしまして、冗談じゃないと、自分たちは性被害に遭って来た人たちが沢山で、恐怖を感じると、そういう人たちをまぁ出てけと言っているんだけど、これが差別に当たる訳ですね、そういう法律が出来るとね、日本でもそういう要求がある訳ですよ、全くそういう事が考えられずに、今の野党案は議論が進んでいるので、私は、もっと立ち止まってそういう議論をすべきだと思うんです。

…銭湯があるでしょ、温泉あるでしょ、それどうするのか、男性器が付いている女性だという人を入れなければそれが差別だということになる訳ですよ、LGBT差別解消法が出来ればね。そこはやっぱり議論のテーブルに載ってないんですよ。

遠藤まめたさん「トランスを知ってほしい」

まず、トランスジェンダーの遠藤まめたさんが、1月9日、批判を投稿しました(「松浦大悟さんの「女湯に男性器のある人を入れないのは差別」論への疑問…野党批判のためにトランスジェンダーへの恐怖を煽るのか?」)

遠藤さんの松浦さんへの批判の論点の第一は、野党の法案批判のために「女湯にトランスジェンダーを入れないと差別」を持ち出しているのではないのか、という点。

第二は、トランスジェンダーの実情を知らずに議論をしないでほしいという点で、「男性器のあるトランスジェンダーが女湯に入ってくる。それを拒むと差別になる」という議論は、あたかもトランスジェンダーたちから(あるいはLGBTの運動サイドから)そのような法制化の要望の声が上がっているかのような誤解を与えていますが、実際にはそのような主張を私は耳にしたことがありません。

ほとんどのトランスジェンダーは薄氷を踏む思いで自分が他者からどのような性別で見られているのかを気にし、周囲に気をつかい、ときには自分自身の外見を憎んだりして過ごしています。」と述べています。

同じゲイからも批判が

松浦発言への批判は、同じゲイの中からも起こります。

男性同性愛史の研究者の前川直哉さんは、「トランスジェンダーとともに」あるために、男性がなすべきこと」で、次のように語ります。

「私にとって許せないのは、自分がゲイ男性だと公言する元参議院議員の松浦大悟氏が、トランス女性の更衣室等利用に恐怖を感じるシス女性の声を悪用し、トランスジェンダーへの排除や差別を煽るような発言をしていることです。…何より私が憤ったのは、松浦氏が「トランス女性」と「トランス女性を排除しようとするフェミニスト」という二項対立を仮構し分離主義を煽りつつ、しかも自らの姿を消す(どちらに批判が来ても自分に火の粉が及ばないようにする)という手法をとっていることです。」

前川さんは、続けて、あらゆる性暴力を許さない社会を作るのは、男性(ゲイも含む)にこそ課せられた責務だと提起します(この前川さんの論考について、DQのブブ・ド・ラ・マドレーヌさんは「朝のようだ」と評していました。)

また、社会学者の石田仁さんも、「人々のトランスジェンダー嫌悪が少なくなれば、ジェンダー平等感覚の形成は進む」の中で、松浦発言は「あたかもフェミニストの総意を仮託されたかのような発言」であるが「フェミニストと(それは本来不可分であるはずの)差別の廃絶との間にくさびを打ち、ふたつを分断させようとして」いると指摘しています。

お風呂の話って

LGBTの可視化(そして法制化)が進む中で、様々な議論が出て来ている訳ですが、特にお風呂の話って狙われやすい所ですね。

個人的には、トランスジェンダーの畑野とまとさんが、松浦発言に「他人事ではないのに」とツイッターで評していて、成る程と思いました。ゲイはトランスと違い外見からの「お風呂問題」はなくても、同性に対する欲望があるのですから(ドキッ)、「他人事ではない」筈です。

なので、少なくとも、煽るような議論は避けたいものだと思わされました。

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