男色エンタメ紀行
ミュージカルタッチに描いたメッセージ性の強い映画
一般公開に先駆けコミュニティセンターdistaで特別試写会が開催されました。
当日映画を鑑賞された三名の方に印象を鼎談風に語っていただきました。
L:「居場所」がテーマの映画だって思った。誰でも行ける場所。主人公のユリシーズにとっての居場所はサタデーナイト・チャーチだった。そこでユリシーズは自分のロールモデルに出会い、正直に自分のことを語ることができた。そして家出して居場所がなくなったとき、ユリシーズが訪れたのがサタデーナイト・チャーチ。困ったとき「あそこにいけばなんとかなる」という場所だったわけね。
B:ニューヨークには身寄りのないセクシュアルマイノリティに居場所を提供している教会が現実にあって、この映画もそこからインスピレーションを受けてつくられたらしい。だからこそ「居場所」が大切だというメッセージが強く発信されているのではないかな。
O:だからなのか、主人公のユリシーズがゲイなのかトランスなのかが曖昧に描かれていると感じたけれど、ゲイにもトランスにもあてはまる物語になっているということなんだね?
B:この国にだって居場所を持たずやるせない思いを抱いている人はいっぱいいると思う。「駆け込み寺」なんていう言葉はあるけれど、トランスやゲイの若者がお寺に駆け込むって話は聞かないしなあ……
O:アタクシの印象は「ニューヨークの映画」ね。楽屋裏の話になっちゃうけど、トランスやゲイを演じられて、かつミュージカル仕立てになっているから歌って踊れる、そんな役者がいっぱいいる街なのねぇ、ってあらためて感じた。上海でも東京でもこれは無理よね、って。
L:アタシもエボニー役の役者(MJ・ロドリゲス)の歌のうまさに仰天したワ。エボニーとディジョン、ヘブンの3人はトランスジェンダーで、生きる手段としてセックスワークもやっている、もしくはやったことがあるという描かれ方に好感が持てた。今は「トランスジェンダー」や「性同一性障害」といった言葉が認知されており、職業選択の幅も少しずつ広がっている。そうした状況はニューヨークも同じで、トランス=セックスワークするしかないという図式ではないのかも。家出をしたユリシーズは、図らずもセックスワークをするんだけれど、エボニーに付き添ってもらい自宅に戻る選択をする。「居場所」にも「食い扶持」にもいろんな選択肢があるっていうことがしっかり描かれていたところがよかったと思う。
O:「ユリシーズ」っていう名前からして「遍歴を重ねていく人」っていうイメージだしね(笑)。
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