今の私にとって悌二さんは、ゲイやアートのあらゆる世界に深く導いてくれる特別な存在です。彼の姿を映像で初めて見たとき、彼はすでに故人ではあったけれどよく知られたアーティストであり、謎多き、遠い存在でした。でもこの調査を通して、悌二さんの友人たちによくしてもらっているせいか、私の身近な人たちの友人、という風に感じることもあります。彼は周りの人々との関係性やその可能性について深く考えていた人だと思うので、彼の存在を彼ひとりを通して語ることは難しいのです。
また、悌二さんは80年代後半以降の日本のゲイカルチャーに大きな影響を及ぼした人物だと思います。アーティストとしての彼は作品から知ることができますが、個人としての悌二さんのことをもっと知りたいし、ひろく知られてほしいと思っています。そんな思いを胸にニューヨークを再訪したというわけなのです。